スクラムフェス大阪2019が最高のカンファレンスだった
スクラムフェス大阪、最高のカンファレンスでした。
パワーがすごい。かつ様々な実践の共有があり、多様性もすごかった。スタッフの皆様のモチベーションも高く、しかもマネーに対するするどい嗅覚もそこここに見え隠れする。
微笑ましい事例の紹介もあるし、そうかと思えば胡乱な取り組みを胡乱なスピーカーが発表し、場を胡乱な空気が支配するようなセッションもある。 計画されたカオスがそこにあった。
そこここに学びがあった。常に交流があり、お互いの状況を伝え合う中での自然なギブアンドテイクが生まれていた。
主催者の提供するコンテンツを参加者が消費するような、一方向な情報の伝達ではなかった。主催者が提供していたのは、交流が起こる場だった。参加者はみなその場自体が価値を持っていることを理解していて、自主的に参加する。
カオスはパワーを生み、予測できない相乗効果が発生した。メンバーのコミュニケーションを促進するのは消費行動ではなく学びであり、コミュニケーションを取るほどに創造性が生まれる。結果として、クリエイティブなカオスがそこに現出した。
アジャイルの意義とは効率良く学習できることにある。そういう意味で、スクラムフェス大阪はアジャイルの体現だった。統制の取れないすばやい学習がいたるところで行われていた。いろいろなスタイルの学びがあり、それで良いとする寛容があった。そしてあふれるほどのリスペクトと感謝があった。
一方「いかに儲けるか?」というビジネス目線の話も数多く、技術に偏ろうとしてしまう技術者とのバランスを取っていた。
「ユーザーに価値を提供する、すると儲かる。だから開発を続けていける。俺達のスタイルは顧客に価値を届けるための手段だ。つまりこのやり方が正しいんだ!」
そのような力強いメッセージが自信を持って語られ、実際利益を上げていることが説得力を与えていた。 こういう成功の匂いは、経営層にとって魅力的に映るだろうと感じた。
素晴らしい場を提供していただいた、スタッフの皆様と参加者の皆様に感謝を。僕にできるせめてもの恩返しとして、僕が学んだことの一部をここに共有します。次回開催予定も決まっているとのことなので、興味ある方はぜひ参加してください。
企業でOSSへのコミットを奨励する体制をつくりたい
僕の兼ねてからの問題意識として、勤務先がスタッフにOSSへのコミットを許可、奨励するようにしていきたいということがありました。
その理由は普段の仕事にOSSを使っているのだから、OSSに価値を返すべきだ、それが巡って自分たちにメリットとして返ってくるはずなので、長期的にメリットがあると思うからです。
ただ、営利企業としては自分たちに利益がないとそのようには考えないので、どのように経営層に提案したら良いのか悩んでいました。
そのような相談をしたところ、自分たちで使っているOSSを拡張するときにフォークするのではなく、OSS自身に取り込んでもらうのが良いと意見をもらいました。
フォークしたプロジェクトはマージし続けなければならず、メンテコストが掛かるので取り込んでもらったほうが自社にとってメリットがあると伝えれば、OSSへのコミットを許可してもらえるようになるのではないか、という意見です。これは目から鱗が落ちる意見でした。
「OSSへの貢献を許可してほしいと思ったときにはすでに!OSSへの貢献を終わらせているんだぜ!」ということですね。このやり方であれば、事実をもとに相談ができるので説得もしやすそうです。
この問題は、個人的にずっと悩んできた問題だったので、その問題への見込みのありそうなアドバイスをいただけたのは本当にありがたかったです。 実際に取り組んでみようと考えています。
みな悩んでいるという気付き
僕は自分の職場環境が、他の企業の職場のようにはうまくいっていないと感じてきました。しかし話を聞いてみると、みなうまくいっていることばかりではなく、問題を抱えていて悩んでいるんだと驚きました。
改めて考えてみると、これは当たり前のことですね。問題というのは解決しても、また別の問題が出てきたり、問題を解決した事自体が新たな問題を生み出したりして、いつまで経っても問題は尽きないということです。みな今より良い状況を目指しますが、そこに到達すると次の目標が出てきてしまう。
いつまで経っても問題がなくなることはなく、悩み続ける。なのでみな悩んでいるんだと気づきました。
そう考えて自分の歩いてきた道を振り返ってみると、強いプレッシャーの中でしたが、問題点に対処し続けてきました。とりあえずの対処だけではなく、問題の本質への対処も試してきた。そしていっしょに協力してきてくれたメンバーへの感謝がある。
感謝を伝えあう文化が育ってきていて、以前に比べれば楽観的な会話が増えてきたと感じる。そう考えるといい方向には進んできているんだろう。
そこにはコミュニティから今までにもらってきたアドバイスや、本から得た情報にも大きく助けていただきました。
その恩返しとして、自分たちの取り組み、自分たちの成果、自分たちの失敗というものも、事例紹介してコミュニティに貢献してもいいのかもな、と思いました。
大きな成功がなくてもスクラムをずっと続けているという事例
生存者バイアスというのは冷や水のような感覚があります。
成功者によって自身の成功体験が語られても、「それはあなたがたまたま運が良かったからうまくいっただけでは?同じことを試して死んでいった無数の失敗事例を考慮に入れてないだけでは?」というような疑問が湧きます。
そういう意味で、この発表には勇気をもらいました。 華々しい成功がなくてもずっと同じことを情熱を持って続けられる、それはそこにそれだけの情熱をかけるに値する価値があるのだという証だと思います。
たとえずっと見返りがなかったとしてもそれを続けていくことができるか?それにYesと答えられることを人生で取り組めるなら、それは幸福な人生と言えるでしょう。この事例は、アジャイル開発に取り組むことに不安を持っている数多くの人に勇気を与えると思います。
発表者の方と懇親会でお話することができましたが、情熱を持ったすばらしい方でした。 参考になる事例の紹介を本当にありがとうございました。
本をいっぱい知れた
#旅するアジャイル本箱 を受付に置いています。ぜひ、眺めたり、手に取ったり、パラ見したりしてみてください。感想を書いていただけるようにもしたので、一言いただけると嬉しいです! #scrumosaka pic.twitter.com/2TktDg8WKP
— YASUI Tsutomu (@yattom) 2019年2月23日
会場に旅するアジャイル本箱というのが置かれてて、みなさんのオススメの本を知る機会になりました。 それをキッカケに、僕もこの機会にいろんな本を買ったりウィッシュリストに追加したりしました。それらの本を共有します。
モブプログラミング・ベストプラクティス ソフトウェアの品質と生産性をチームで高める
- 作者: マーク・パール,及部敬雄(解説),長尾高弘
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2019/02/23
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マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選3 採用は2秒で決まる! 直感はどこまでアテになるか? (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選)
- 作者: マルコム・グラッドウェル,勝間和代
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謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か
- 作者: エドガー・H・シャイン,金井壽宏,野津智子
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- 作者: エドガー・H・シャイン,金井壽宏,原賀真紀子
- 出版社/メーカー: 英治出版
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- 作者: 野々村健一
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世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法
- 作者: ピョートル・フェリクス・グジバチ
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
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- 作者: 各務太郎
- 出版社/メーカー: クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
- 発売日: 2018/11/09
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人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
- 作者: エドガー・H・シャイン,金井壽宏,金井真弓
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2009/08/08
- メディア: 単行本
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- 作者: マルコム・グラッドウェル,高橋啓
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2001/06
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最後に
スクラムフェス大阪、本当に最高でした。ここには書ききれないくらいの数知れない学びと、勇気をいただきました。 スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
そして今回来れなかった方、次回はぜひ一緒に楽しみましょう!