「「読まなくてもいい本」の読書案内」の感想

確かAmazonで評判が良かったか何かで知ったので読んでみた。

内容は多方面にまたがっていて、刺激的な話ばかりだったのでスラスラと一気に読めてしまった。 知らなかった内容も多くて、今後興味を向けたい分野の参考にもなった。

話題はいくつかのグループに分かれていて、なんでそういうグループ分けにしたのかはわからない。ただ、それぞれの話題で共通する話題もあり、入口から入って最後まで進んでいくのに混乱しない構成であるのは確か。

自分の中で面白かった話題をいくつか挙げていく。

マンデルブロについての話

マンデルブロという名前はフラクタルアルゴリズムで絵を描くときに聞いたことはあったけど、具体的にどういう人なのかは知らなかった。

実は複雑系やカオス理論といわれる分野で業績を残していた人だったらしいです。世の中の様々な事象正規分布になっている、というのがよく言われますが、これでは説明できないことも多い。代わりにべき分布という考え方を導入して、その問題を解決したんだそう。ロングテール現象もべき分布なら説明できる。統計や複雑系の分野は今でもすたれてないので、勉強してみる価値がありそうだと思った。

ゲーム理論

ゲーム理論についても、基本的な考え方については勉強したことがあったけど、よくわかってなかった。それが非常に強力な考え方であることや、いろいろな分野に応用され続けていることなどを知れたのはよかった。これも勉強する価値がありそう。

政治体制について

政治体制の位置関係を知れたのもよかった。政治体制というのは人類が進化してきた結果として発達してきたもので、大きく分けて3種類の立場がある。平等主義リベラリズム自由主義リバタリアニズム共同体主義コミュニタリアニズム。それ以外に進化の過程から出てきたのではない功利主義という政治体制がある。

これらの立場はMECEになってるぽくて、今までの人生で目にしてきた政治体制は確かにこれらのどれかに含まれる感じだ。なのでどういう主張が出てきたとしても、これらのどこに重点を置いた主張なのか、ということを考えれば分類して特徴を知ることができてしまうので、非常に強力そう。

面白いのは、進化の過程で出てきた3つの立場の主張は人間の本質的な欲求なのだけど、それら全てかなえる政治体制というのはありえないということが論理的に言えてしまう。この本はその点を明快に説明している。なので、それぞれの立場で妥協をしないといけないのだけど、それぞれの幸福度を最大にして妥協するにはどうしたらいいか、ということを考えるのが功利主義という考え方。 どういうトレードオフにするのが最も幸福度が高いか、というのは頭のいい人なら日常的にやっていることだけど、それをつきつめて考える主張なので、功利主義というのは頭のいい考え方なことは間違いない。

意識について

ほかには無意識と意識に関しての実験の話が面白かった。僕らは常日頃、自分の行動は自分の意志の結果として行動している、と考えているけど、実験の結果、僕らが行動する時には意識の介在する余地はあまりなく、だいたい無意識に決定を下しているということがわかったそう。

面白いのは無意識に選択した結果行った行動について、なぜそうしたのかを質問すると、ありそうな理由をでっちあげるという点。僕らの行動は自分の意志で行ったものじゃなくて、無意識が判断して行っている。じゃあ僕らの意識が何をしているのかというと、あとづけの理由を考えて、自分の行動に矛盾がないと信じ込ませていること。僕らは自分にうそをつきつづけて、自分を納得させ続けている。 だとするなら、自分の行動の理由を深く考え続けることにはそんなに意味はない、といえるのではないだろうか。犯人探しや反省をやりすぎても意味がなくてそれよりは、そう選択した原因と、次はどうするのがいいかを考えることのほうが有意義そうだ。

最近の科学の流行を知るのに良い本

いくつかの分野について、パラダイムの歴史を知ることができるので、科学の歴史を俯瞰するのには役立つ本だと思う。 ただ、科学は現在進行形で進み続けているものなので、5年後、10年後にはそれらの成果を踏まえてアップロードする必要があるだろう。なのでこの本は今読んでおくことに価値があると思う。

また、本書では筆者のおススメの分野も紹介されているが、今後何を学んでいくかは読者が選択する自由がある。内容を妄信するのでなく、自分の選択の参考にする、というスタンスで接するのが、本書との良い付き合い方かなと思う。